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最高裁判所第三小法廷 平成4年(行ツ)132号 判決

上告人

名古屋市人事委員会

右代表者委員長

永井恒夫

右訴訟代理人弁護士

冨島照男

宮澤俊夫

小川淳

磯貝浩之

被上告人

藤田邦彦

右当事者間の名古屋高等裁判所平成二年(行コ)第一三号措置要求に対する判定等の取消請求事件について、同裁判所が平成四年三月三一日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人冨島照男、同宮澤俊夫、同小川淳、同磯貝浩之の上告理由について

地方公務員法四六条は、地方公共団体の職員に対し、職員がした措置要求について、人事委員会により、その裁量の範囲内において適法な手続によって判定を受けるという手続上の利益をも、職員の権利ないし法的利益として保障する趣旨の規定と解すべきである(最高裁昭和三四年(オ)第一一八七号同三六年三月二八日第三小法廷判決・民集一五巻三号五九五頁参照)。ところで、原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人は、被上告人の本件措置要求に対し、これは勤務条件に関するものには該当しないから取り上げない旨の判定をしたというのである。しかしながら、本件措置要求が職員の勤務条件に関する側面を有することは否定できないから、上告人は、これを受理した上、措置要求に応ずることができるものかどうか、あるいは、執ることができる適当な措置があるかどうかなどの点につき、審理すべきものである。そうすると、上告人が、当初から、本件措置要求を取り上げることができないと判定したことは、前記の地方公務員法四六条の趣旨に徴して、被上告人の手続的な権利ないし法的利益を害するものといわなければならない。前記判定を取り消すべきものとした原審の判断は、右の趣旨において正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 大野正男 裁判官 尾崎行信)

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